細野晴臣×星野源②

細野:歌詞もやっぱり寝かしておくことが大事で。最初から完璧な歌詞を書こうとすると、大体、上手くいかないもんじゃない?

星野:そうなんですよ。歌詞を頭から完成させようとしてたから、何度もスタートからやり直すハメになってしまって。

細野:それじゃ進まないな。まずは散文詩を書いといて、どんな曲にしたいか固まってきたら、歌詞に変換していけばいい。

星野:確かに。どういう曲にしたいかっていうのが、はっきりしてなかったんですね。

細野:だから一旦全部忘れて、どんな曲にしたいかを決めた方がいいよね。決めるというよりインスピレーションに従う。

星野:なるほどなあ。

細野:でも、なんかきっかけがないとね。さっき言った新曲のきっかけは、くだらないの(笑)。でも参考のために言うとね。

星野:ぜひ聞きたいです。

細野:『人志松本のすべらない話』(フジテレビ系列)を観てたらね。千原ジュニアさんが車好きらしくて。「右折したいのに道路が渋滞した場合、一旦、直進する。で、左折、左折でまた道路に戻る。これは”捨て左折”だ」って(笑)。自分もやるからさ、そういうの。その話の流れで松本人志さんが「高速道路を降りたすぐのところが結構な坂で、下半身がフワ〜ってなる」と。それを誰かが”チンさむ”と名付けて、松本さんが「チンさむ・ロード!」って口走ったの。そのとき、僕は往年の名曲「ロンサム・ロード」をやっぱりいい曲だなあと思い出して、新曲が閃いたわけ。タイトルは「ロンサム・ロードムービー」。

星野:”チンさむ・ロード”がキーワードだったんですね(笑)。

細野晴臣 星野源『地平線の相談』文藝春秋:P286、287より)