細野晴臣×星野源①

星野:なんか今あまり悩みがなくて。

細野:幸せな感じなんだね。じゃあ、相談のネタはないな(笑)。ネタは不幸な環境から生まれることが多いからね。逆に、幸せだから曲が出来ないとか、そういう悩みはないの?

星野:あ、あります。幸せがどうこうとかは関係なく、なかなか曲が出来なくて。

細野:この間、お互い、ソロアルバムをがんばろうって盛り上がったばかりなのに。

星野:毎日作業はしてるんですけれども……。あの、細野さんは自分で歌うときの歌詞ってどうやって作ってるんですか?

細野:どうやってるんだろう。よくわからない(笑)。いつの間にか出来てるんだよ。

星野:それはうらやましいです。

細野:リキッドルーム(『De La FANTASIA 2009』)のときに、新曲を1曲演ったんだけど、それは2日前に、ふわっと出来ちゃったんだ。

星野:おお〜。

細野:よく考えたら、最近、ボブ・ディランもそうなんだけど、僕もカバーが多くてさ。(鈴木)慶一くんに「伝承音楽家」って言われたくらい。でもカバーばかりじゃ申し訳ないと思って、とにかく作っちゃおうと。そしたら前に溜めてたメロディがあったんで。とにかく、メロディはすぐ出来るじゃない?

星野:そうですね。でも、歌詞が……。

細野:うん。言葉はギリギリにならないと出て来ないね。だから未完成のまま……。

星野:それでいいんですね。今、完成させることが出来ないのがしんどくって。

細野:完成させようと思ったら辛いよ、寝かしておかないと。音楽ってね、インスピレーションが湧いたときに引っ張り出して、ダーッと短時間で作るもんだと思う。

星野:じゃあ、細野さんは歌詞もパッと作っちゃうんですか?

細野晴臣 星野源『地平線の相談』文藝春秋:P284、285より)