松任谷由実×松浦亜弥

松浦:私、自分で作詞をまだ一度もしたことがなくって、やっぱり、近い将来は自分で作詞というものを、やっていきたいなと。今はつんく♂さんだったり、いろいろな方からいただいたものを、自分なりに消化をして、理解をし納得をして歌っているんですけど、なんかやっぱりこう、自分の思う気持ちっていうものを歌いたいなぁと、思っているんですが。

松任谷:いやぁ厳しいこと言うようだけど、妙にしない方がいいよ作詞とか。

松浦:えぇ、そうなんですか?

松任谷:うん、その方がカッコいい。人が書いてきたものを自分のものに、しちゃって歌えるっていう方が素晴らしいと思う。

松浦:えー、そうですか?

松任谷:悪いけどなんか、あとで「詞を書き出したんです」みたいな。で「アーティスト」みたいなふうに言われてる人の。ろくな詞ないもん。

松浦:(笑)

松任谷:だから、曲とか詞を書くっていうのは、もう生活、生理。一緒だから。食事したり歩いたりすることと。言われる前から書いてるのよ。人が止めようと。勧めようが勧めまいが。自分の欲求として、もう幼い頃から作っちゃっている。もちろん、ある日突然、書きたくなって自分で書いたものを自分の言葉を歌いたくなって、ひらめいちゃって。ってことはあるかもしれないけど「書いて歌うようになりたいんです」って言っているようだったら書かない方がいいと思う。だって同じだよ。それは人が作ってきたものでも。(その人の)ためを思って作ってきてくれたんだから。「あややはこうだ」って。それを表現できることの方がスゴイと思うね。

松浦:ほぉー。そういうふうに考えたことなかったです。

松任谷:別に人が作ったものでも自分のでも関係ないと思う。私は。で、その吸引力を持つことが大事だと思う。なんか「こんなピッタリのものが出来ちゃった」っていう、それはひとえに人徳だったりするわけだから。いや、もちろん、ほんとにある時ね、どうしても書きたくなって、ということがあれば別なんだけれどフォーマットとして求めない方がいいと思うよ。

(東京FM『松任谷由実 For Your Departure』2005年10月30日放送分より抜粋)